船井本社リレーコラム第3回最終回は「C’est jolie.に込めた思いは、自己愛」です。
本リンクはこちらhttp://www.funaiyukio.com/heart/
私は京都・烏丸五条で「SOBACaféさらざん」というそばガレットとそばスイーツをご提供する飲食店を営んでいますが、そばの隠れた魅力を広めるため、またそのずっと先にある世界平和の実現という目的のため、店舗運営以外にもさまざまなことをしています。
そばガレットを焼く講習会もそのひとつ。お店で提供された完成品を食べるだけでなく、自分で焼くのもおいしく楽しいのがそばガレットです。一昨年末から続けてきて、京都のみならず東京でも開催させていただき、受講者は1年でのべ160人になりました。
昨年後半には、本格的なそばガレットをおうちで手軽に焼く道具のさらざんオリジナル鉄板とトンボのブランディングを図り、新たなブランド「C’est jolie.」を立ち上げました。京都の伝統工芸の職人さんにひとつひとつ手づくりで作ってもらっている貴重な品で、今後色々なところで販売を展開したいと思っています。
さて、宣伝はこの辺までで、今回の愛についてのお話です。
この、ブランドとして冠した「C’est jolie.」という言葉。これは、フランス語で「それって素敵だね」という意味です。英語では“It’s cute.”や“It’s nice.”にあたります。今後ゆくゆくは世界へ向けて展開していこうと意気込んでいるブランドに、「そば」でもなく「ガレット」でもなく「さらざん」でもなく、なぜあえてこのフレーズをブランド名にしたのかといいますと、もちろん理由があります。
私は2010年に大学院を出てから店を開き走り出し、それから3年後にはもう1店舗増やし、一方でプライベートでは結婚、出産、育児を経験しました。怒涛の如く進みましたが、すべてを同時に進めることができなくなり、あえなく休業しました。その休業期間の間に、根本にあるそばガレットをもう一度見つめたいと、そばガレットの故郷フランスはブルターニュ地方を訪れました。創業前に初めて訪れてから、人生2度目の訪問でした。
約束を守れず、信頼していた人たちとの関係が壊れ、育児に疲れ、挫折し、自分が崩壊しそうになっていましたが、ブルターニュのガレットやそばを巡る旅は、ダイヤモンドの原石はまだ自分の中にあるのだと教えてくれました。
滞在した宿泊先は、築300年のどっしりとした石造りの古い伝統的な民家を大切に住み継いでこられたものでした。薄暗いリビングルームには暖炉があり、その脇のフレンチドアからはさわやかな風が入ってきます。階段の壁は色が塗られている途中で終わっています。聞くと、この下の色が塗ってみてから気に入らないので塗り替えているところだそう。庭にはクルミやヘーゼルナッツの大きな木があり、バラが芳醇に咲いています。囲われた畑にはいろんな野菜の他、たわわに実るベリーが濃い赤や紫に熟れています。カシスの実があんなに大きいとは思いもしませんでした。庭の木陰で心地よい風を感じて本を読みながら飲んだカフェオレはしっかりした濃厚な味がしました。派手な豪華なものはなくとも、地に足の着いた実直で豊かな暮らしがそこにはありました。
あるときそこのオーナー夫婦が、自分たちで手入れした庭を眺めながら話していた中に、「C’est jolie.」が聞こえてきました。「この庭、やっぱりいいよね」「うん、いいね。今度の日曜日に一輪車の修理をしよう。じゃがいもにも肥料を入れなきゃね」自分たちの施した仕事を客観的に評価して、そして自分たち自身で褒める。けっして自惚れではなく、良くないところはそれはそれできちんと評価する。でも、良いところはしっかりと褒めよう。だって、一生懸命したんだもの。
挫折した自分をなかなか認められなかった私は、そうか、こうやって自分のしてきたことのひとつひとつを客観的に見て褒めるということをしてこなかったな。これまでしてきたことのすべてが悪かったのではない。もちろんだめだったこともたくさんあるけど、良かったこともたくさんある。全部否定しなくてもいいんだ。あかんかったところはきちんと振り返って今後に活かす。良かったことはしっかり認める。私以外の誰が、それをできるだろう。私自身が私自身を真に認めることが、今一番大事なことだ。
そんな風に思えるようになりました。
日本に帰って来て、まず相談したのが、鉄板を作ってもらっていた鍛冶職人さんでした。店をあきらめきれず、やはり続けたいと思うと同時に、これまでの鉄板のデザインの一部を変えて講習会の事業も展開していきたい、将来的にこの名前のブランドにしたいと伝えました。店を始める前から応援してくれて私の紆余曲折・栄枯盛衰の一部始終を見てきた鍛冶屋さんは、ええんちゃう、作ったろ、と賛成してくださいました。そして、この鉄板が生まれました。
そばガレットは、簡単に作れるインスタント食品とは異なります。ちょっと難しい。焼くのにコツがいる。でも、少し練習すれば誰でもおいしく焼くことができます。そうして取り組むこと、上達すること、反対に失敗することも、そうやって楽しむ時間、暮らしそのものも。そのどれもが、C’est jolie.なのです。私たち自身のそういう姿勢を、私たち自身が褒めないのはもったいないことです。良いことは良いと、大きな声で褒めて良いのです。上手になれたね、おいしく焼けたね、とっても楽しいよね、そうやって、良いことは良いと褒めること、つまり自分自身をきちんと認めることは、すべての土台になります。そうして、豊かなものが生まれてくるのだと思います。
この3回のシリーズで書かせていただいた私の考える愛について、一貫しているのは、「励まし」と「祈り」です。これは、相対する対象についてのみならず、自分自身に対してもいえることです。自分自身を励まし、よりよくなることを願うことは、すべての土台になります。本当に自分が望んでいることをまっすぐに見つめて、過去のことはよくなかったことはきちんと認め、よかったことは自信を持って支えの柱とし、そこから再構築する。人生で迷ったり困ったりした時には、C’est jolie. 自分のことを愛しましょう。
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私は京都・烏丸五条で「SOBACaféさらざん」というそばガレットとそばスイーツをご提供する飲食店を営んでいますが、そばの隠れた魅力を広めるため、またそのずっと先にある世界平和の実現という目的のため、店舗運営以外にもさまざまなことをしています。
そばガレットを焼く講習会もそのひとつ。お店で提供された完成品を食べるだけでなく、自分で焼くのもおいしく楽しいのがそばガレットです。一昨年末から続けてきて、京都のみならず東京でも開催させていただき、受講者は1年でのべ160人になりました。
昨年後半には、本格的なそばガレットをおうちで手軽に焼く道具のさらざんオリジナル鉄板とトンボのブランディングを図り、新たなブランド「C’est jolie.」を立ち上げました。京都の伝統工芸の職人さんにひとつひとつ手づくりで作ってもらっている貴重な品で、今後色々なところで販売を展開したいと思っています。
さて、宣伝はこの辺までで、今回の愛についてのお話です。
この、ブランドとして冠した「C’est jolie.」という言葉。これは、フランス語で「それって素敵だね」という意味です。英語では“It’s cute.”や“It’s nice.”にあたります。今後ゆくゆくは世界へ向けて展開していこうと意気込んでいるブランドに、「そば」でもなく「ガレット」でもなく「さらざん」でもなく、なぜあえてこのフレーズをブランド名にしたのかといいますと、もちろん理由があります。
私は2010年に大学院を出てから店を開き走り出し、それから3年後にはもう1店舗増やし、一方でプライベートでは結婚、出産、育児を経験しました。怒涛の如く進みましたが、すべてを同時に進めることができなくなり、あえなく休業しました。その休業期間の間に、根本にあるそばガレットをもう一度見つめたいと、そばガレットの故郷フランスはブルターニュ地方を訪れました。創業前に初めて訪れてから、人生2度目の訪問でした。
約束を守れず、信頼していた人たちとの関係が壊れ、育児に疲れ、挫折し、自分が崩壊しそうになっていましたが、ブルターニュのガレットやそばを巡る旅は、ダイヤモンドの原石はまだ自分の中にあるのだと教えてくれました。
滞在した宿泊先は、築300年のどっしりとした石造りの古い伝統的な民家を大切に住み継いでこられたものでした。薄暗いリビングルームには暖炉があり、その脇のフレンチドアからはさわやかな風が入ってきます。階段の壁は色が塗られている途中で終わっています。聞くと、この下の色が塗ってみてから気に入らないので塗り替えているところだそう。庭にはクルミやヘーゼルナッツの大きな木があり、バラが芳醇に咲いています。囲われた畑にはいろんな野菜の他、たわわに実るベリーが濃い赤や紫に熟れています。カシスの実があんなに大きいとは思いもしませんでした。庭の木陰で心地よい風を感じて本を読みながら飲んだカフェオレはしっかりした濃厚な味がしました。派手な豪華なものはなくとも、地に足の着いた実直で豊かな暮らしがそこにはありました。
あるときそこのオーナー夫婦が、自分たちで手入れした庭を眺めながら話していた中に、「C’est jolie.」が聞こえてきました。「この庭、やっぱりいいよね」「うん、いいね。今度の日曜日に一輪車の修理をしよう。じゃがいもにも肥料を入れなきゃね」自分たちの施した仕事を客観的に評価して、そして自分たち自身で褒める。けっして自惚れではなく、良くないところはそれはそれできちんと評価する。でも、良いところはしっかりと褒めよう。だって、一生懸命したんだもの。
挫折した自分をなかなか認められなかった私は、そうか、こうやって自分のしてきたことのひとつひとつを客観的に見て褒めるということをしてこなかったな。これまでしてきたことのすべてが悪かったのではない。もちろんだめだったこともたくさんあるけど、良かったこともたくさんある。全部否定しなくてもいいんだ。あかんかったところはきちんと振り返って今後に活かす。良かったことはしっかり認める。私以外の誰が、それをできるだろう。私自身が私自身を真に認めることが、今一番大事なことだ。
そんな風に思えるようになりました。
日本に帰って来て、まず相談したのが、鉄板を作ってもらっていた鍛冶職人さんでした。店をあきらめきれず、やはり続けたいと思うと同時に、これまでの鉄板のデザインの一部を変えて講習会の事業も展開していきたい、将来的にこの名前のブランドにしたいと伝えました。店を始める前から応援してくれて私の紆余曲折・栄枯盛衰の一部始終を見てきた鍛冶屋さんは、ええんちゃう、作ったろ、と賛成してくださいました。そして、この鉄板が生まれました。
そばガレットは、簡単に作れるインスタント食品とは異なります。ちょっと難しい。焼くのにコツがいる。でも、少し練習すれば誰でもおいしく焼くことができます。そうして取り組むこと、上達すること、反対に失敗することも、そうやって楽しむ時間、暮らしそのものも。そのどれもが、C’est jolie.なのです。私たち自身のそういう姿勢を、私たち自身が褒めないのはもったいないことです。良いことは良いと、大きな声で褒めて良いのです。上手になれたね、おいしく焼けたね、とっても楽しいよね、そうやって、良いことは良いと褒めること、つまり自分自身をきちんと認めることは、すべての土台になります。そうして、豊かなものが生まれてくるのだと思います。
この3回のシリーズで書かせていただいた私の考える愛について、一貫しているのは、「励まし」と「祈り」です。これは、相対する対象についてのみならず、自分自身に対してもいえることです。自分自身を励まし、よりよくなることを願うことは、すべての土台になります。本当に自分が望んでいることをまっすぐに見つめて、過去のことはよくなかったことはきちんと認め、よかったことは自信を持って支えの柱とし、そこから再構築する。人生で迷ったり困ったりした時には、C’est jolie. 自分のことを愛しましょう。